GINO VANNELLI



GINO VANNELLI / CANTO : BMG (74321-88101) 2003

WAIT!!あのポップス・シンガーがイタリアを震撼させる!?

 みなさんは本作の主人公、ジノ・ヴァネリをご存知でしょうか。「アイ・ジャスト・ワナ・ストップ」や「ブラザー・トゥ・ブラザー」、「リビング・インサイド・マイセルフ」など、ロックの限界を越えたパフォーマンスとヴォーカルのダイナミクスで、我々を常に圧倒して来てくれた、まさしくあの人です。私もご多聞に漏れず、カナダ出身の彼のヴォーカルに魅せられ全ての作品を購入しただけでなく、マニア間では有名なシングルのみの発売で終わった「THE LONGER YOU WAIT」を手に入れたり初来日公演に行くなど、結構ファン丸出しのひとりです。本作は彼の『SLOW LOVE』以来5年ぶりとなる待望の新作なのですが、なんと聴いてびっくり!! 全11曲中6曲をイタリア語で歌っているではありませんか!

 本作は90年代の彼の作品である『YONDER TREE』や『SLOW LOVE』と同一ベクトル上にある“大人のためのヴォーカル・アルバム”となっており、イタリアで言えば最近流行の宗教音楽路線、アントネッラ・ルッジェーロの『Luna crescente』やアリーチェの『GOD IS MY DJ』、そしてミーナの『DALLA TERRA』といった作品、そしてパヴァロッティが歌い上げる節回しから、ルイス・ミゲルの『ロマンセ』シリーズのようなアンティークな感じの全てがほどよくミックスされていますが、一番近いのはやはりアンドレア・ボチェッリなのではないでしょうか。オペラ的というよりは、むしろクラシックそのものといった曲もあり、いったいどんな曲をカヴァーしているのかと思いきや、全曲オリジナルではありませんか! ジノ・ヴァネリにはジョーとロスという優秀な兄弟がいますが、彼らが才能の全てを出し切ったような崇高な佳曲ばかりが並んでいます。 さらに驚いたことに2曲目の「PAROLE PER MIO PADRE」ではなんとピーノ・ダニエーレが作詞で参加しており、このアルバムのプロダクションの確かさも伺えます。本作のハイライトはカルメンを想起させる9分にも及ぶ大作「MALA LUNA」でしょうか。フルオーケストラをバックに歌うジノ・ヴァネリの姿は、あの遠い70年代の頃とは全く違った、家族愛を大切にした大人の男性としての魅力を見せてくれています。それは最後の曲「THE LAST DAYS OF SUMMER」で理解出来ます。

 まるでどこかの映画のサントラを聴いているようなこの作品、イタリア音楽ファンだけでなく、世界中の人を感動の渦に巻き込むこと間違いなしでしょう。私個人としては、私設グラミー賞をあげたい気持ちです。マジでだまされたと思って聴いてみて下さい!


ITALIAN ARTIST CHRONICLE